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| 財団法人 太田綜合病院附属 太田西ノ内病院 |
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糖尿病患者さんへのフットケア教育は、非常に重要であると認識されているものの、臨床の現場でのフットケア指導は全国的にまだ模索状態の施設が多いのが実情です。
太田西ノ内病院の糖尿病センターの病棟ではフットケアチームというプロジェクトチームがあり、6人のフットケアのエキスパート看護師が率先して病棟でのフットケアにあたっています。そこでこのフットケアチームがどのような患者指導をされているか取材しましたのでご紹介いたします。
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福島県郡山市にある太田西ノ内病院は、診療科が32科、ベッド数は1144床を数え、救命救急センターを有する高機能総合病院として、地域において大きな役割を担っています。また、医学の専門分化が進むなかで疾病を多様な角度からアプローチするため「センターシステム」を採用しています。
糖尿病センターでは医師・看護師・栄養士・薬剤師・臨床検査技師・運動療法指導士・臨床心理士により構成され、チーム医療を行っています。今回、この糖尿病センターで病棟を取り仕切っている市川より子看護師長にお話を伺いました。
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―フットケアチームを立ち上げたいきさつを教えてください。
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数年前に糖尿病センターの病棟で看護師として見直しや改善が必要なことを考えた時に「クリティカルパス」と「看護基準」と「フットケア」の3つがありました。
看護師は仕事内容が多岐にわたっていることもあり、どうしても通常の業務に追われてしまいがちです。だから看護師が意識を持って問題に取り組めるようにそれぞれ「プロジェクトチーム」を作りました。これがフットケアチームの始まりです。プロジェクトチームごとに研究や学会発表を行いながら、それをどう実践に落とし込んでいくか、目標と責任を持って取り組んでもらいました。現在フットケアチームは6名の看護師がおり、彼女たちは日常の看護業務も行いながらフットケアのプロフェッショナルとして、他の看護師にもフットケアの方法を指導し、教育入院中の患者さんにフットケアを行っています。
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▲市川より子看護師長(左)と
フットケアチームのメンバー(一部) |
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―具体的に教育入院中にどのようなフットケア教育をおこなっていますか?
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フットケア教育は、集団指導と個別指導の両方を行っています。
以前は集団指導だけの時期や個別指導だけの時期もありました。しかし、集団指導と個別指導と両方を組み合わせた方が効果的であることがわかり、現在では個別指導と集団指導の両方を行っています。
教育入院の1週目に個別指導を行い、患者さんの足の状態を把握して足に興味を持ってもらった後、2週目に集団指導としてフットケアの講義を行って、足への関心を高めます。
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―どのような個別指導を行っているのですか?
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個別指導は患者さんのベッドサイドでおこないます。患者さんは、足を見るために看護師がわざわざ来るということに驚かれる方が大半です。しかし、こちらとしてはそれも狙いです。教育入院の初期では糖尿病とフットケアが全く結びついていない方が多いので、わざわざ看護師がやってきて個別指導をする、ということでフットケアの重要性を強く受け止めてもらえるようです。
また、教育入院の初期に行うのも重要です。最初に患者さんの足を確認することで他科の治療が必要な場合にはすぐに始められますし、患者さん自身にも、早く足に関心を持ってもらえます。
具体的にはまず「タッチテスト5.07(モノフィラメント)」で足の感覚をテストして、そのあと13項目について足のチェック(観察)を行います。
看護師は病室に入ると、まず患者さんにこれから行うタッチテストの説明を行い、実施への理解を得ます。次に大部屋ではプライバシー確保のためにカーテンを閉め、患者さんには靴下を脱いでいただきます。さらに患者さんには10分ほど安静にしてもらい、タッチテストを心身ともに落ち着いて受けられるように準備をします。また看護師は標準予防策(Standard Precautions)として患者さんの足を触る際は手袋をします。
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1.タッチテスト5.07(モノフィラメント)を使って患者さんの触圧覚を確認します。
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患者さんの手にタッチテスト5.07をあてて、痛くないことやこれを足に当てることを説明します。 |
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当てる箇所は3箇所(親指の腹、親指の付け根と小指の付け根)で、潰瘍部、胼胝、傷、壊疽部には当てません。 |
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タッチテストを皮膚表面に直角に当て、十分曲がるまでおさえます。 |
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「何か当たっていますか?」「どこに当たっているように感じますか?」と声をかけ、触っている箇所を手で指示させます。同じ場所で2回繰り返し、少なくとも1回は「偽」の検査を行い、1箇所につき計3回の質問をします。 |
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※ 多発性神経障害は両側性であるので、患者さんにはタッチテストは右足か左足のどちらかにのみ行うことを説明します。
タッチテストはあくまでもスクリーニングですので異常がみられた場合には医師に報告し、神経伝達速度の測定など、より精密な神経障害の検査を行います。
看護師がタッチテストを行うのは「検査」というよりも、看護師と患者さんの足についての『コミュニケーションツール』とか患者さんにとっては『フットケアへの動機付け』という意味合いが強いですね。
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▲看護師がタッチテストを足に当てる

▲患者さんは触れた箇所を手で示す |
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2.足の状態を、13の項目について観察します
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「しびれ」や「冷感」などは患者さんの足を一緒に見ながら、足の状態を説明します。足の温度については患者さん自身に左右の足を触らせて確認してもらいます。
特に足背動脈については、患者さんにも足に脈拍があることが分かるように説明をします。足背の脈拍が弱くないかどうか、左右に差がないかどうかを確認し、患者さんに許可を得て足にマジックで脈拍が振れるところをマーキングします。「ご自身で脈を確認してみてください。位置を覚えてご自宅に帰っても時々はご自身で確認してくださいね」と指導します。足の脈なんて触ったことがない人がほとんどですから皆さん不思議そうに触れています。自分の脈を実感することで意識も変わるようです。
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▲足背動脈の脈拍を確認します

▲脈拍が振れる箇所をマーキングします
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▲個別指導で用いるチェック表 (クリックすると拡大)
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その他にも「胼胝、ウオノメ」、「踵の肥厚」「爪」の項目を通して、患者さんから生活の様子を伺い、それに合わせて生活指導を行います。チェック表にも記入します。
個別指導は患者さんのレベルに合わせて行うので、人によっては30分以上かけることもあります。時間も手間もかかりますが、患者さんの生活に合わせたきめ細かい指導ができるので、非常に有効です。
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―足に異常があった場合はどのように対応されていますか?
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全て内科の医師に報告、相談して指示を仰ぎます。場合によっては皮膚科や整形外科的な処置が必要なこともあり、医師が連携を取ります。その点では、太田西ノ内病院は総合病院ですのですぐに専門の先生に診てもらうことができます。爪切りや白癬のケアなどの処置は医師の指示を受けて行います。
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―集団指導はどのように行っているのですか?
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集団指導は教育入院の2週目にフロアのオープンなスペースで講義形式で行います。集団指導では患者さんが完全に受け身になってしまわないよう、いろいろな工夫が必要です。講義では、三大合併症の話、神経障害の話から、どうして糖尿病になると足のケアが必要なのか、図を使って説明します。カラフルな色画用紙を使って模式的な手作りの図を使うことで、視覚的に患者さんの興味をひきつけています。
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▲集団指導の風景
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―集団指導ではどのようなパンフレットを使用していますか?
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▲手作りの講義テキスト
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太田西ノ内病院には病院の医師が監修した教科書があって、患者さんは全員持っていらっしゃいます。教科書ですから何度も読んだりご自身で書き込んだりしてほしいのですが患者さんは「せっかくの教科書だから」と大事にきれいに使おうとされている方が多いのです。ですから集団指導では、教科書の内容から大切なポイントだけを抽出したパンフレットを作り使用しています。これですと、患者さんは講義を聞きながらご自身で書き込んだり、折りたたんで持ち歩いたり、気軽に何度も見ているようです。
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―このようなフットケア教育を行っていくに当たって重要なことは何でしょうか?
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フットケアの指導方法として、集団指導も、個別指導もどちらも大変大切です。集団指導ではフットケアの重要性を認識できますし、個別指導では看護師が直接患者の足に触れ個々に合わせた指導を行うことができます。そのどちらにも共通して重要なのは、指導の中で患者自身が足に興味をもてるような内容の充実を図ることです。そのためのツールがタッチテストであり、手作りの模式図やテキストであると思います(第8回日本糖尿病教育・看護学会学術集会にて発表済み(日本糖尿病教育・看護学会誌 第7巻特別号p85,2003))。
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フットケアチームの取り組みをお伺いして、看護師さんたちの患者さんの足に対する思いを強く感じることができました。日々の忙しい業務の中で、少しでも患者さんに足に意識を持ってもらおうという小さな工夫や実践が積み重なって、太田西ノ内病院のフットケアチームがあるのだと感じました。
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